HF帯トランシーバー用10MHz基準発振器を作る

       10MHz基準信号の制作
                                       最終:2018.12.05

入手したExpertのSDRトランシーバーSunSDR2proに10MHz基準信号入力があるので、
どうせなら周波数の精度を上げようと試作することにした。
0.計画
  [2018.4]OCXOの中古をeBayで安く売っていた(¥1000~¥2000)ので試しに購入。
  まず、OCXO単品で精度を見てよければそのまま単品で使う。求める精度が得られなければGPS同期にする。
  私が求める精度は、50MHzで5Hz未満の 誤差=0.1ppm なら良いだろう。
  ちなみに最近のRIGのスペックで周波数精度を見ると()内は50MHzでの誤差
   Kenwood TS-990:0.1ppm(5Hz)、TS-590G,TS-590:0.5ppm(25Hz)
   Icom IC-7800,7851,7700:0.05ppm(2.5Hz)、IC-7610,7300:0.5ppm(25Hz)
   Yaesu FT-5000(MP-Limited):0.05ppm(2.5Hz)、他の5000,3000:0.5ppm(25Hz)
  SunSDR2proとMB1は、仕様を見ると0.5ppmになっています。中級機なみです。
   さすがに各社のフラグシップ機は良いがOCXOを使っている事から安定するのに電源ONから
   3分程度は待たないとON直後は数100Hzの誤差になっているでしょうね。

1.OCXOを入手して周波数精度の確認
  入手したのは、5V電源、電圧で周波数の微調整端子を持つ、26mm角の物でNDKのENE3311
  とCTIのOSC5A2B02←Chinaのメーカーみたいです。右がNDKのもの。性能は同等でした。

 

 


 100均で買ってきたスマホ充電用のACアダプタで、電源5Vを供給し、周波数調整用端子(Fcont)には
 10KΩのVRで分圧して供給した。実験はバラック状態で!!
 倉庫からルビジュウム同期10MHz基準発振器と周波数カウンターを出してOCXOの周波数精度の測定開始。
 電源ON時は500Hz程度のづれで2分ぐらい待つとOCXOの発信周波数が安定してくる。
 VRで周波数を10.000000MHzに調整する。さらに10分ほど待って、0.1Hzの桁を0に合わせる。
 電源5Vの消費電流は、電源ON時が500mAで安定すると300mA程度です。Fcontの電流は0.1uA。

 この状態で、2昼夜の間で周波数の変動を見た結果は+-0.4Hz程度(0.04PPM)の変動範囲。
 室温は、朝の7度~エアコンが効いて21度の範囲。
 周囲温度の変化は当然として、商用電源電圧変動によるFcontの電圧変動も大きな変化要素と思われる。
 この状態で、50MHzでは2Hz程度の誤差なので、各メーカーのフラグシップ機並みだ。
 Fcontの電圧を安定化すれば、さらに安定し、十分に実用になると判断した。

2.基板の設計
  OCXOの出力容量が不明なので、CMOS-GateをBufferとして追加。
  Fcontの電圧安定化のためにTexasの基準電圧発生IC(出力4v)を追加した。回路図はこちら
  この基準電圧発生ICを使うアイデアが結果Goodで、各社のフラグシップ機より遥かに高い精度になった!!。
  各Rigメーカーさん、マネをしても良いですよ(^o^)
  追加10枚は、VRの両側に5KΩと10KΩの抵抗を追加、周波数微調整の範囲を狭くしました。
 (0~4Vの可変範囲は必要なかったので。これにより周波数の微調整が楽になりました)

3.基板に部品を実装して評価
  Fcontの電圧を基準電圧IC(電圧安定度は1ppm)で安定化したので、期待して評価開始。
  上が7桁の周波数カウンター、下がルビジュウム10MHz基準発振器、手前が作ったOCXO基板

出力波形をオシロで見た結果はこれです。矩形波と思っていたら、こんな波形でした。オシロのサンプリング周波数が
低いからかも? 実際は矩形波??

完全なSin波ではないけど良しとします。電圧はP-Pで約4vです。
Sin波が欲しけれは共振回路を追加すれば良いですね。
お送りする前のOCXOが7枚あったのでオシロで波形を確認しました。
ENE3311A,B,E ですが大きな違いはなかったです。写真はこちら

問題の周波数安定度は、10MHzでの周波数変化は0.1Hz/1昼夜です。100Mhzで1Hz以内の誤差。 0.01ppm=10ppb !!
TS-990より一桁良い結果です(^o^)
145MHzでも2Hz未満の周波数誤差!! トランシーバーの周波数精度としては十分ですね。
当初は、C/Nが悪化を覚悟のうえでGPS+PLLでやらないとダメかなと思っていましたがこれでOKです。
ルビジュウム同期の10MHz基準信号発振器を常時電源ONで使っている方も一部にいるが、とにかく電気を食うので持っていても、
私は常時ONで使う気がしなかったがこれで解決です。。
周波数の微調整をすると精度0.002ppm(1GHzで2Hz誤差)程度まで追い込めます。そこらの周波数カウンターより高精度です。
周波数カウンターの基準Clockとして使うのにも良いですね(^o^)
HF(1.8~50Mhz帯)のトランシーバーに接続すれば周波数誤差なし(0Hz)で気持ち良く使えますね!!

4.実際にトランシーバーに供給するには
  トランシーバーによって個々に入力条件が異なります。
  ちなみにICOMのIC-7610では、入力インピーダンス50Ωでレベル(消費電力)が-10dBmと書かれています。
  出力インピーダンス50Ωにして、インピーダンスとレベル合わせが必要になります。
  -10dBm=0.1mW=0.0001W、電圧が約0.07v。この条件に合うように抵抗分圧で良いですね。
   470Ωと51Ωで分圧して、0.001uFでDCのcutをして、IC-7610用に作りました。
   写真の精度10bpmは、10ppbの印刷間違いです。
 友人のIC-7610に接続してテストしてみました。IC-7610の受信周波数を10MHzにしても
 漏れ、ケースからの筐体輻射もなく不感でした。OKです(^o^)
 これを使えば、IC-7610など10MHz基準入力端子を持つトランシーバーの周波数精度が
 フラグシップ機のIC-7851より良くなります。残念ながらIC-7300は入力端子を持っていない。


私は、これをリモートシャック用のSun SDR2pro(CMOS-Level接続)に接続して使います。
5V供給電源は常時ONで使うつもりでしたが2分位で安定するのでシャックのPC電源連動にしPCの5Vから供給します。

5.SunSDR2proに接続して10MHzを受信して意外なことに気づきました
  IC-7610に接続して10MHzを受信した時は不感でした。
  ところが、SunSDR2proでは、SSB受信時にSが約4振っています。
  ただし、取り外してInternalの設定でも同様にSが約4振っています。
  この事からInternal/ExternalともSSB時で同等のSメーターの振れです。
  スペアナの画面で見るとInternal設定では、周辺にNoiseがかなり乗っていますが
  私が作った10MHz基準発振器は非常にきれいで、信号の純度が全く違います。
  ノイズフロアーも幾分下がったように感じます。大成功!!やったね(^o^)
内部の基準発振(Internal設定)


私が作った10MHz基準発振器を接続して、External設定


アマチュア無線の10MHzバンドは100KHz以上離れるので実用上は影響ないとは思います。
Noiseフロアが-140dBm!! 内部雑音が恐ろしく小さいです。これなら超高感度も納得です。

6.頒布について
 [2018.10.06]Sold Out 20枚作りましたが私の予備1枚を残して頒布終了しました。
 [2019.02.20]要望があるので、基板20枚を追加作成しました。
  箱なしの完成基板、出力はSMAまたはBNCのMaleで、周波数校正をしてのお渡しです。
  追加作成した物は、国産トランシーバーに接続される方が多くなったので、3個の10MHz出力端子の内、
  CMOS直接出力1つと50Ω-10dBm出力2つにしました。
  (IC-7610、IC-9700、TS-890等のUSERが多いですね)
   追加作成した基板の回路図はこちら 2個分を1枚の基板にしたのでどちらかになります。
  頒布費用は送料込みで、SMA-male/BNC-male出力ともに¥6.5kにします。
  SMA/BNCどちらも使いたい方は、SMA-femaleからBNC-maleに変換するアダプター¥500を追加です。
  希望の方はEmailで、連絡ください。
  ja4bua@ict-kuwa.net あて、@を半角に変更して。
  郵便番号、住所、氏名、コールサイン、電話番号、同軸プラグがSMA/BNCの別、接続先機器名

[2019.05.28] 追記
  複数のトランシーバーに接続する人が結構いるようなので、Optionとして出力の接続ケーブルをOptionとして
  ¥1000/本 で提供します。必要な方は頒布依頼に追記してください。

    左:BNCプラグ 右:SMAプラグ  同軸はRG174です。